○新県立中央図書館整備方針の見直し
令和7年9月県議会定例会で、県立中央図書館の全館移転整備については、一旦立ち止まり、整備方針を見直すこととなったため、今年度に計上した歳出予算8億1,700万円と来年度以降に設定した債務負担行為261億9,700万円を全て減額しました。
現在の県立中央図書館は1970年に建設されたもので老朽化、狭隘化により、新県立中央図書館の整備が検討されてきました。県は192億円で整備する計画でしたが、物価高騰などにより106億円増額し、298億円に計画変更し、136億円の国庫支出金を見込みました。令和6年9月定例会で、令和6年度の歳出予算は0円、令和7年度から9年度の3か年で267億9,800万円の債務負担行為を設定しました。債務負担行為の設定は将来の支出を約束したものであり、令和6年度の歳出予算額が0円であっても契約行為は行えます。しかし、入札は不調に終わり契約はできませんでした。そして、令和7年1月、国土交通省から「交付金の配分にあたっては一定程度の限度を設ける」と連絡があり、「交付金は(国の)予算の範囲内でのみ交付が可能であること、物価高騰に伴い自治体からの要望が拡大していること」などにより満額は交付されないとの説明がありました。その後、県と国は協議を重ね、4月に入り、交付金は最大34億円程度になることが判明します。
令和7年6月定例会の代表質問で私は、
・国庫支出金について事業費のおよそ3分の1に当たる100億円もの見誤りは、とんでもない事態であり、県にはこの状況を県民に対して説明する責任があること。
・そもそも、社会資本整備総合交付金が、ひとつの自治体のハコモノに136億円も交付されるという想定自体が過大であったこと。
・事前に同じ交付金で事業を行っている他の自治体に直近の実際の交付率を確認すればこのような事態を予見できたこと。
などを指摘しました。
県議会文教警察委員会はこの事態を重く受け止め、6月定例会終了後に、本件の発生原因について徹底した調査を行うよう教育長に申し入れるとともに、閉会中も継続審査することとしました。主な問題点は、①過大な交付金を見込んでいたこと及び交付金の交付見込みについて国への確認をしてこなかったこと、②交付金の見込みが不明確な状況で令和6年度に建設工事の入札を実施したこと、③財源不足を把握していたにもかかわらず令和7年度当初予算に歳出予算及び債務負担行為を設定したこと、です。
これに対し県教育委員会は、原因究明と責任の所在を明らかにするために「調査検討チーム」を設置し、法曹関係者、県教職員コンプライアンス委員、心理学関係者ら外部有識者の意見も伺い「新県立中央図書館整備事業に係る調査報告書」をまとめました。この中で文教警察委員会が問題とした3点について、①要望金額が交付されるとの前提に立ち、交付金が全額交付されると思い込んでいた、②静岡県財務規則には「特定財源の収入が確実に見込まれる場合」は事業が執行できると規定されているが、長期にわたる大型事業について、財源確保の見通しや長期の財源確保の確約をもって事業を進めるなど、具体的な確認行為がルール化されておらず、「法令の誤った理解」や「財務規則の適用違反」が原因とは断定できない、③国からの、静岡県の要望に全額応えることは困難との連絡に対して、交付額が具体的に確定したものではないと捉えていた、と原因を分析しました。
私は、国の交付金(社会資本整備総合交付金)の申請にあたって、ルール上の交付率は2分の1であっても、メニューにより実際の交付率は異なるため、同じメニューの交付を受けている他の自治体に直近の交付率を確認しなかったことが最大の原因だと思っています。入札執行にあたっては債務負担行為が設定されている以上、執行は可能であり、入札を行ったことより令和6年9月議会で国費136億円を財源とした債務負担を設定したことに問題があると考えています。
代表質問で私は知事に、今後、同様の事態を招かないために県としてしっかり対策を取るよう要望しましたが、この調査報告書をもとに具体的で効果的な改善策が示されることを期待しています。

