4月2日、川勝知事は突然辞職を表明しました。知事は1日、県庁での新規採用職員への訓示で「県庁はシンクタンクです。毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはものを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」などと述べました。この職業差別ともとれる発言に対し翌日2日午後5時までに430件、4日までに累計2,571件の意見が寄せられ、その内95%以上が抗議や苦情でした。こうした状況の中、知事は2日夕方の取材で突然に「6月議会をもってこの職を辞そうと思っている」と辞職を表明しました。
知事は3日に記者会見を行い、辞職を決意した理由は、自らの発言と着工を認めてこなかったリニア中央新幹線が大きな区切りを迎えたことの2つだと説明しました。自らの発言については「不十分な言葉づかいによって人の心に傷つけた。大きく反省するべきことだ。これが繰り返されていることも大きな辞任の理由だ」と述べ、リニア中央新幹線については「(JR東海が)丹羽体制になり最低でも13年余りかかるということは本当に重要な、私にとっては爆弾的なニュースだった。これで後は任せられる。これが大きな理由だ」と述べました。
3日の記者会見では、謝罪の言葉はあったものの発言は撤回しませんでしたが、5日に「職業差別と理解する人が急速に増えている。本意ではないので、削除して撤回する」と表明しました。
川勝知事は、昨年6月定例会で知事の不信任決議案が審議されたことを受け、7月の定例記者会見で「不適切な言動があったら辞めるということになっている」、「今度間違うようなことをして人様に迷惑をかければ辞職する」と発言しました。9月定例会では自民改革会議の坪内議員の質問に対し「もし不適切な発言があった場合にもう既に辞職勧告決議を頂いておりますから退路を断っております。したがってそうしたことが県民に迷惑をかけるというようなことになれば、これは辞職することを明言しその覚悟はできております」と答弁しています。また、同定例会で「知事の給与の特例に関する条例」の審議に関して「不適切な発言があった場合には辞職するとの発言に責任を持つこと」と全会一致で付帯決議が付けられました。
しかし今年3月13日、サッカー女子なでしこ1部リーグの「静岡SSUボニータ」が知事を表敬訪問した際に、「磐田は浜松より文化が高い」、「藤枝東はサッカーボールを蹴ることが一番重要」などと特定の地域や学校を揶揄する発言をし、物議を醸しました。そして今回の発言です。誰かを持ち上げるために特定の人や地域を比較のために持ち出すという知事独特のやり方は、多くの人たちを傷つけてきました。
自ら辞職の道を選んだことは評価しますが、これまでの度重なる不適切な発言や行動を見れば遅きに失したと言わざるを得ません。辞職から50日以内には知事選挙が行われます。真に県民の立場に立てる知事、真に静岡県の発展を考える知事を選出しなければなりません。