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1 知事の政治姿勢について
(1)就任から現在までの成果と今後の県政運営について
前知事の突然の辞任を受けて行われた県知事選を経て、鈴木知事が昨年5月に就任してから早くも1年が経過しました。多岐にわたる県政の重要課題に向き合いながら、この1年間、県政運営に尽力されてきたことに、まずは敬意を表したいと思います。
鈴木知事は、4期16年と長きにわたり浜松市長を務められた後、県知事へと転身されましたが、市政と県政では同じ地方自治体という面で共通部分も多くある一方、行政規模やその果たすべき役割、住民との関わり方など様々な異なる面もあることから、市長時代と比べ、より広範かつ大局的な視点から地域課題の解決に向け、県政運営を進めているものと推察されます。
また、知事は、社会情勢がめまぐるしく変化する中で、自治体経営には明確な経営方針が必要であるとし、将来世代に対して責任を負う、最少の経費で最大の効果を挙げる、新しいことへの挑戦、巧遅より拙速、「人」を活かす、という5つの経営方針を掲げています。
知事は、就任当初から、この経営方針に従い、様々な場面においてスピード感を重視した県政運営を進めていくと発言されていましたが、就任から1年が経過し、県政運営において具体的にどのような成果を上げることができたと考えているのか、知事のお考えを伺います。
また、知事は新聞社のインタビューなどで、2年目は「財政改革とチャレンジの両方を回す」とお答えですが、就任2年目をどのような決意と考えをもって取り組まれていくのか、今後の県政運営にかかる知事のお考えを伺います。
【知事答弁】
私は、昨年5月の知事就任以来、「幸福度日本一の静岡県」を目指し、常にスピード感を持った県政運営に邁進してまいりました。
将来の成長につながる取組として、次世代エアモビリティーの導入に向けたロードマップの策定や、スタートアップの支援、企業誘致、ライドシェアの導入拡大、インドとの交流・連携、多文化共生の推進など、積極的に事業を展開してまいりました。
また、県民の皆様が安心して暮らせる社会を構築するため、県東部を中心とした医師の不足する地域に、浜松医科大学と連携して指導医と専攻医を一体で派遣する事業に着手したほか、半島防災対策として、伊豆縦貫自動車道を中心とした交通網の強靱化などの取組も進めました。
懸案であったリニア問題では、就任直後から、先頭に立ってJR東海や国との対話を進め、信頼関係の構築に努めました。その結果、専門部会での対話の環境が整い、28項目の解決すべき課題のうち、水資源の項目全てを完了するなど、着実に状況が進展をいたしました。
さらに、厳しい財政状況の中、未来を切り拓く新たな取組を積極的に進めるため、中期財政計画を策定するとともに、県債残高1,000億円程度の削減や、プライマリーバランスの黒字化などの目標を掲げ、持続可能で健全な財政基盤の構築に踏み出したところであり、1年目の県政運営には、一定の手応えを感じているところであります。
就任2年目となる今年度は、自らの考えで編成した予算、組織体制で県政運営に取り組み、成果につなげる重要な1年であり、「財政改革元年」「チャレンジ元年」と位置付けました。
財政改革の取組では、中期財政計画の具体化として、サマーレビューを実施し、全事業について、成果や県民ニーズなどの観点から必要性を再検証して見直しを進めます。チャレンジ元年での取組では、職員の仕事の進め方の見直しやDXの推進により生産性の向上を図るとともに、生み出した財源と人的資源を活用することで、職員の自由な発想や創意工夫を施策に反映させ、これまでにない斬新な事業の創造につなげてまいります。
今後も、県民の皆様の期待に応えるべく、「幸福度日本一の静岡県」の実現に向けて、スピード感を重視した県政運営に努めてまいりますので、引き続き、県議会の皆様の御支援と御協力をお願い申し上げます。
(2)市町との関係構築について
【質問全文】
近年、ますます複雑化・多様化する行政需要に的確に対応していくためには、県とともに地方自治を担う市町との連携が極めて重要であり、これが構築できなければ、そのしわ寄せは県民に及ぶことになります。
令和4年の台風15号による豪雨災害では、県と静岡市のコミュニケーション不足が、自衛隊への災害派遣要請の遅れにつながったと指摘されました。有事において県民の生命と財産を守るためにも、平時からの市町との連携が不可欠であることは言うまでもありません。
このようなことから、私は、県と市町が緊密に連携し、県民に対する身近な行政サービスを担う市町を、広域自治体である県が補完する仕組を構築することが、県と市町の関係において、最も重要なポイントであると考えております。
昨年6月の定例会において、我が会派の相坂議員が市町との連携について質問した際、知事は「まずは、私自身が、市町長の皆様をはじめ、県民の皆様の声を丁寧に聴くことを徹底いたします。地域ごとの考えや悩みなどをできる限り広く、深く把握した上で、全力で問題解決に当たり、実績を一つ一つ積み上げてまいります。」と答弁されました。
そして、就任1年後の本年5月のインタビュー記事では、この1年の市町との関係構築を振り返り、「選挙の“しこり”を解消し、県内の状況把握に努めた。その点で体制づくりの1年だった。」と、手応えを感じた旨の発言をされています。
そこで、この1年間、知事は、市町との関係構築のため具体的にどのような取組を進められてきたのか。また、今後、市町との更なる連携強化に向け、どのような方針で取り組まれていくのか所見を伺います。
【総務部長答弁】
地域の行政課題が複雑化・多様化する中、住民サービスを直接提供する市町との良好な関係構築は不可欠であることから、まずは、知事就任以降、地域の声を丁寧に聴き、施策への反映に努めてまいりました。
具体的には、知事と市町長が意見交換を行う「地域サミット」などを通じて、直接お聴きした地域の実情や課題を踏まえ、観光や子育て支援等の施策を企画・立案し、市町と連携して取り組んでいるところです。さらに、「行政経営研究会」においては、「多文化共生施策の推進」など新たに3つの検討会を設置し、好事例の共有や横展開を図っております。
今後も、こうした意見交換や協議の場を通じて、県と市町が相互に課題を共有し対応を検討することで、地域資源を活かした新産業の創出や、スタートアップ誘致による二地域居住の促進といった重要施策の効果的な立案・展開につなげてまいります。
県といたしましては、引き続き市町との良好な関係構築の下、連携強化にとどまらず、広域自治体としてのリーダーシップを発揮することにより、幸福度日本一の静岡県の実現を目指してまいります。
2 人口減少対策の視点に基づく次期総合計画の策定について
【質問全文】
現在、県が策定を進めている次期総合計画は、まち・ひと・しごと創生法で定める地方版総合戦略としての性格を有するものとされています。
地方版総合戦略とは、少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、地域で住みよい環境を確保し、将来にわたり活力ある社会を維持するための取組について、目標や施策の基本的方向等を定めるものであり、言い換えれば、次期総合計画は、「人口減少対策に関する県の最上位計画」ということになります。
こうした、計画の位置付けから、昨年度、県が策定した次期総合計画の経営方針では、「今後の社会展望と課題」として、人口減少の動向が真っ先に挙げられており、その中で、「25年後の令和32年における本県人口は、推計で282万9千人となり、ピークであった平成19年の379万7千人に対し、実に約4分の3にまで減少が見込まれる」とされています。
人口減少への対応は喫緊の課題であり、「人口減少の抑制」と「人口減少社会への適応」の両面から、積極的な取組を進めていく必要がありますが、県としてどのような考えの下、取組を進めていくのか、大いに注目をしています。
こうした中、国が今月発表した地方創生2.0基本構想では、人口減少を正面から受け止めた上で、地域に必要なサービスを持続的に提供できる体制の構築をテーマに、10年後に目指す社会像として「地方への若者の流れ」や「関係人口」などについて、定量的な目標数値が設定されています。
人口減少対策としての性格を有する本県の次期総合計画においても、人口減少対策の視点に基づく施策の位置付けや目標の設定、効果の把握等が必要になるのではないかと考えます。
そこで、次期総合計画の行動計画において、人口減少対策の視点からどのような対策を講じていくのか伺います。
【企画部長答弁】
人口減少問題は、県政の最重要課題の一つであり、これに歯止めをかける「抑制対策」を基本としつつ、長期的な人口減少は進んでいくとの認識の下、そうした社会を前提に、豊かな生活を維持・向上させていく「適応対策」も進めておくことが重要です。
今月、国が発表した地方創生2.0基本構想におきましても、「これまでの地方創生の成果を継承・発展させつつ」、「人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策も講じる」こととされており、抑制対策と適応対策に取り組む基本姿勢が示されたところであります。
構想で示された地方への若者の流れやAI活用などに関する目標を踏まえつつ、県においても、魅力ある職場づくりなどによる若者・女性に選ばれる地域づくりや、AIなどの新技術の徹底活用による生産性の向上、関係人口や二地域居住による人材の好循環の創出など、抑制対策と適応対策の両面から、具体的な取組や数値目標を次期総合計画に位置付けてまいります。
今後、次期総合計画に掲げた取組の成果や目標に対する進捗状況を人口減少対策の視点からもしっかりと評価し、PDCAサイクルを回すことで、迅速かつ着実に対策を進めてまいります。
【要望】
本県の推計人口がいよいよ350万人を割りました。本県の特徴は、人口減少が加速度を増していることと、20代前半の若者の転出超過が深刻であることです。「人口減少を正面から受け止めた」人口減少社会への適応策が重要なことは理解しますが、本県においては「人口減少の抑制策」いわゆる「異次元の少子化対策」を継続していくことも重要であると考えていますので、総合戦略を併せ持つ総合計画に、「適応策」、「抑制策」両方を数値目標を置いたうえで、取り組んでいただくよう要望します。
3 県債残高の削減を掲げる中での今後の公共投資の方針について
【質問全文】
県は、本年2月に策定した「中期財政計画」において、今後10年間で県債残高を1,000億円程度削減する目標を掲げています。これは、将来世代に過度な負担を負わせないよう、県債の発行額を抑制し、持続可能な財政運営を目指すものであり、財政健全化に向けて重要な取組です。
一方で、県民の生命や財産を守るとともに、県民の生活や経済活動を豊かにするため、道路や河川堤防などをはじめとする公共インフラの整備、公共投資が必要であることは言うまでもありません。特に、災害への備えは、何よりも優先すべきものです。国の補助事業や交付金事業に加え、我が会派の要望により、本年度当初予算において措置された緊急豪雨災害対策強化事業や、緊急自然災害防止対策事業などをフルに活用し、今後も引き続き、南海トラフ地震等の巨大地震への備え、気候変動に対応した流域治水対策など、県民の命を守るための取組を進めていくべきと考えます。
公共投資は、本県の未来を切り拓くための重要な戦略であり、県債残高という負の側面だけでなく、公共投資により得られる効果も勘案した上で、今後の在り方を考えていく必要があります。
また、中期財政計画では、「今後の対応」として、投資的経費の適正化の他にも、歳出の全般的な見直しなどを通じた資金手当債の抑制や、歳入確保の強化、大規模プロジェクトの見直しといった方策が掲げられています。こうした取組を進めることにより、公共投資とのバランスを図る形で財政健全化を模索していくべきではないでしょうか。
県債残高削減の目標を見据えつつ、今後の公共投資について、どの分野を優先し、どのような水準を維持するのか、県の方針を伺います。
【知事答弁】
私は、県政運営の根幹は、持続可能な財政基盤の確立にあると考えており、現下の厳しい財政指標の改善を図るため、中期財政計画において、10年間で県債残高1,000億円程度の削減を目指すこととしており、今後、強い覚悟を持って取り組んでまいります。
県債には2種類あります。一つは、世代間の公平性を図るため、建設事業で発行する県債であり、もう一つは、本県の毎年度の当初予算において、財源不足額の解消のために発行を余儀なくされている、消費的経費に充当可能な資金手当債であります。これは、正に将来世代への負担の先送りであるため、まずは、この資金手当債の早期発行中止に向けて、事業の見直しを進めてまいります。
建設事業のために発行する県債は、道路、橋梁、河川堤防、港湾などの公共土木施設や集客、貸館等の公共施設などが対象となります。
公共土木施設につきましては、道路が全国第10位、河川は第7位など、多くの施設延長を抱えており、橋梁では築50年以上の施設が約6割を占めるなど老朽化も進んでおります。今後、将来的な財政負担を抑えつつ安全に長期間使用していくためには、定期的な維持補修のほか、予防保全などの長寿命化対策が重要であり、これまで、社会インフラ長寿命化行動方針を策定して取り組んできたところです。
また、全国とのネットワークの維持、建設物価高騰による工事発注可能量の減少、災害時を見据えた地元建設土木事業者の存続などの観点から、公共土木施設の一定の工事量確保については、地域社会や経済にとって重要と考えます。そこで、今後のサマーレビュー等を通じた歳出・歳入の見直しの状況も踏まえながら、必要な水準の確保に努めてまいります。
一方、公共施設につきましては、人口減少が進展し、社会環境が変化する中で、必要面積の変化や、時代にあった機能への転換、必要性の見直しなどが必須であります。今後、ファシリティマネジメントの取組の中で、コンセッションをはじめ民間活力の導入等の検討も進めながら、適切な維持水準を見定めてまいります。
これらの取組を通じて、県民生活を支える必要な公共投資と財政規律のバランスを適切に確保しながら、県民の皆様が安心して暮らすことができる県土づくりに努めてまいります。
【要望】
資金手当債の発行を抑えていくということですが、相当な事務の効率化・簡素化、あるいは廃止等を行わないと、まとまった金額の削減につながらないと思いますので、県債発行を抑制するといって、県民にとって必要な公共事業を削減するこがないように、特に災害への備えや、県内でも地方部といいますか周辺部にお住まいの県民の生活もしっかり守っていくよう要望します。
4 南海トラフ地震の新たな県の被害想定について
【質問全文】
本年3月31日、政府は「南海トラフ巨大地震」の新しい被害想定を公表しました。今回の被害想定では、高齢化の進展や、住宅の耐震化率の向上、災害関連死やいわゆる「半割れ」と呼ばれる時間差をおいて発生する地震等の過去の自然災害の経験・教訓などが盛り込まれました。
人的被害については、津波の浸水域や住民の避難行動を最悪のケースで試算した場合、静岡県内の犠牲者数は約10万3千人と、前回の国の想定からわずか6千人程度の減少に留まり、依然として全国で最多となるなど、大変厳しい結果となりました。犠牲者数の内訳は、津波が約8万9千人、建物の倒壊が約1万2千人、火災が約1,900人などとなっています。
県は、「地震・津波対策アクションプログラム2013」に基づく対策の成果として、想定死者数が2万2千人まで減少したと試算していますが、新しい国の被害想定死者数の約10万3千人と大きな乖離が生じています。
この乖離の理由を丁寧に説明しないと、これまでの私達の努力が無駄であったかの如く誤解されてしまうのではないかと危惧しているところです。
このため、現在策定中の新しい県の地震被害想定には、これまでの本県の防災対策の成果を反映するとともに、新しい被害想定に基づいた防災・減災対策についても県民や企業等に示していくことが重要と考えます。
そこで、今回の国の被害想定との違いを明らかに出来るよう、これまでの防災・減災の取組をどのように県の被害想定に反映し、県の取組に活かしていくつもりなのか所見を伺います。
【知事答弁】
県は、これまで「地震・津波対策アクションプログラム2013(にせんじゅうさん)」に基づき、公共建築物や住宅の耐震化、防潮堤や津波避難施設の整備、早期避難意識の向上等を推進し、令和4年度の県民の早期避難意識の状況を基に、目標の8割減災を達成したと試算したところであります。
一方、国が3月に公表した被害想定は、全国一律の条件により計算されたものであり、最大津波が防潮堤を乗り越える場合は破壊される前提で検討されているほか、住民の早期避難意識を10年前と同じ20%と想定するなど、県や市町が取り組んできた粘り強い防潮堤の減災効果や県民の防災意識の向上などの成果はほとんど反映されていません。
このため、新たな県の被害想定では、これまで実施してきた防潮堤や水門、津波避難タワーの整備といったハード対策や、「わたしの避難計画」の作成、防災訓練の実施等のソフト対策について、学識経験者や市町との意見交換を行いながら、第5次地震被害想定策定会議において評価し、その効果を適切に反映してまいります。あわせて、災害関連死など新たな想定項目につきましても、本県における影響等を精査し反映してまいります。
また、公表の際には、国と県の異なる被害想定により混乱が生じないよう、県民の皆様に、両方の被害想定の考え方と結果を丁寧に説明し、新しい被害想定における命を守るための適切な行動について、周知してまいります。
5 原子力災害への備えについて
【質問全文】
平成23年の東日本大震災を受け、中部電力浜岡原子力発電所が政府の要請で全号機が停止し14年が経過しました。その間、中部電力は、新たに施行された新規制基準への適合性確認審査を、平成26年に4号機、平成27年に3号機について、原子力規制委員会に申請しました。原子力規制委員会の地震・津波関係の審査で、重要な施設の安全性を確保するうえでの基準となる基準地震動が令和5年、基準津波が令和6年に確定し、同年12月にプラント関係の審査が開始されました。
この間、原子力災害に備えて、本県は、浜岡地域原子力災害広域避難計画を策定し、これを基に、発電所から概ね31km圏内である原子力災害対策重点区域に位置する11の市町もそれぞれ避難計画を策定しました。
しかし、県の広域避難計画に明記されているように避難計画の実効性を向上させるためにはまだいくつかの課題が残されており、本年3月17日、我が会派は知事に対し「原子力災害に関する広域避難計画の実効性の向上を図るための提言」を行ったところであります。
提言は、避難者が避難する際の第一目的地となる避難経由所を早期に選定すること、病院や社会福祉施設等、支援を要する方々が利用する施設の避難計画が早急に策定できるよう県が強力に指導すること、放射線防護施設の補助対象範囲の拡大を国に要望すること、など5項目にわたるものです。
いずれも避難計画の実効性を上げるうえでは重要な項目ですが、その中でも、私が特に注目しているのは、屋内退避に資する放射線防護施設の整備です。
先月、静岡新聞社が行ったアンケートでもUPZ圏10市町のうち9市町が「複合災害での屋内退避に課題がある」と回答し、多くの市町が10km圏外の放射線防護施設整備への補助を求めています。
そこで、避難計画の実効性の向上についての取組の現状を伺うとともに、入院患者や要配慮者の避難及び10km圏外への放射線防護施設の整備に関する県の考えを伺います。
【危機管理部長答弁】
県は、関係11市町と連携し、浜岡原子力発電所における原子力災害に備え、防災対策の充実・強化に継続して取り組んでいるところであります。
避難計画の実効性の向上のうち、避難経由所につきましては、必要施設数のうち約9割の選定が終わっており、残り1割についても、国の支援を受け、避難先都県・市区町村に改めて広域避難の必要性や避難の手順等について、丁寧に説明することにより選定を進めてまいります。
社会福祉施設の避難計画につきましては、令和6年度末時点で対象施設の約4割において策定が完了しております。引き続き、関係市町等と連携し、対象施設への個別訪問などを進め、計画策定を促進してまいります。また、医療機関の避難計画につきましても、令和6年度に作成したガイドラインなどを活用し、社会福祉施設と同様、個別訪問などを通じ、計画策定を促進してまいります。
要配慮者が屋内退避するための建物の放射線防護対策につきましては、県としても対象範囲の拡大が必要であるとの認識を持っているため、他の原子力発電所立地道県と連携し、国に要望しているところであります。
県といたしましては、引き続き国の支援を受けるとともに、関係市町や関係部局と連携し、避難計画の実効性の向上に取り組んでまいります。
6 リニア中央新幹線の整備に伴い水資源に影響が出た場合の対応について
【質問全文】
島田市相賀の大井川広域水道企業団の敷地に、斉藤滋与史元知事の筆による「飲水思源」という記念碑が建てられています。大井川の水が10年の歳月をかけ、標高およそ100メートルの牧之原台地を越え、流域市町に給水が開始された昭和63年に建立されたものです。「飲水思源」、水を飲みて源を思う、水を飲むときは常に水源地を思い感謝する、転じて物事の基本を忘れない、また、他人から受けた恩を忘れてはいけない、という意味と聞いております。大井川流域の住民は、大井川の水に感謝し生活しております。
昨年5月の就任以降、鈴木知事は、リニア整備と大井川の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立に向けて、JR東海との対話について、スピード感を持ちつつ、かつ丁寧に進めていると認識しています。
これまでの対話の結果、水資源編で6項目、生物多様性編で17項目、トンネル発生土編で5項目の3分野28項目に整理した「今後の主な対話項目」については、10項目が対話完了となったところです。水資源編については、今月2日の県専門部会において、残っていた2項目の対話が終結し、全6項目の対話が完了となりました。
しかしながら、このJR東海との対話により、大井川の水資源の保全対策が講じられたとしても、これは一定の予測に基づくものであり、将来的に水資源に影響が生じることはない、と言い切ることはできません。
このため、水資源編の6項目についての対話が完了したとしても、大井川流域には、依然として、リニア整備に伴う将来的な水資源への影響について、大きな不安は残ることになります。
この不安を解消するためには、JR東海が将来にわたり、水資源への影響に対する補償に対応し、そのことについて、国にしっかりと関与いただくことを文書として残すことが必要と考えます。
水資源に関する議論が区切りを迎え、今後、JR東海による将来にわたる補償等の対応と、それに対する国の関与について、県は、JR東海や国との間で、具体的な協議を行うことになると思いますが、どのように進めていくのか、知事の考えを伺います。
【知事答弁】
県といたしましては、リニア中央新幹線の整備について、大井川流域の皆様の理解と納得を得る前提として、まずは残る18項目の課題の解決を図ることが必要と考えております。生物多様性に関する項目などの対話が継続していることから、引き続き、JR東海との対話についてスピード感を持ちつつも、丁寧に進めてまいります。
一方で、残る18項目について、科学的・工学的な議論が尽くされ、対話が完了したとしても、想定外の事態が発生した場合の影響について、流域の皆様が不安を持たれていることは、承知をいたしております。
この不安を解消するためには、議員御指摘のとおり、水資源への影響があった場合に、JR東海が将来にわたり補償の対応を行うこと、また、このことについて、国に何らかの関わりを持っていただくこと、そして、これらを文書により担保することが必要であると考えております。
このため、今後、大井川水系の水資源の確保、水質の保全等の流域関係者による一体的な対応が目的の大井川利水関係協議会の会員である、流域8市2町や利水者の御意見も伺いながら、着工以降の水資源への影響とリニア整備との間の因果関係の立証責任の所在や、立証の客観性の担保など、補償の対応に関する基本的な事項や国の関与の在り方等について、県としての考えを整理してまいります。
そして、この考えを国やJR東海にお示した上で、議論を進め、文書の内容を精査してまいります。そして、国やJR東海との議論が整った後には、大井川利水関係協議会の会員の皆様の御理解をいただいた上で、文書を交わすことになると考えております。
県といたしましては、流域の皆様が、将来の大井川の水資源の利用に対し不安を残すことがないよう取り組んでまいります。
【要望】
今年1月29日、大井川流域10市町の首長は連名で国土交通省鉄道局長に「万が一、水資源への影響が起こった場合の補償なども含め、将来に亘ってJR東海への徹底した指導と積極的な関与をお願い申し上げます」という要望書を手交しております。
知事は、昨年7月23日の大井川流域首長との意見交換会で、JR東海及び同社を監督する国と、工事を巡って文書を交わす意向を示されました。
また、昨年の9月定例会の我が会派の小沼県議の代表質問に対し、知事は将来の担保の必要性を改めて強調し、JR東海との協定について「国の関与もしっかりと引き出していく」と答えられた。
知事が努力していただいていると承知はしております。水資源に関して大井川流域の県民は、万が一の事態への対応について、将来に亘ってJR東海はもちろん、国の関与についても文書に残すことを強く望んでおりますので、地元に寄り添い、引き続き国との交渉を続けていただいて、その様子も逐次、情報公開していただくよう要望したします。
7 市町のDX推進に向けた支援について
【質問全文】
今後、さらなる人口減少の進展に伴い、地方公共団体においては人口の低密度化等によりサービス効率が低下するとともに、就労人口の不足により必要な職員数を確保することが困難になることが見込まれる中で、行政サービスを持続的、安定的に提供するためには、デジタル技術の導入と活用による業務の効率化が欠かせません。
県では、既に生成AIの全庁導入を進め、業務効率化に取り組んでいるほか、全職員のリテラシーやデジタルスキルを向上させるための研修も実施するなどして、全庁を挙げたDX推進に取り組んでいると伺っております。一方で、県のみならず、住民に身近なサービスを提供する市町のDXも同時に推進する必要があります。
県内の状況を見ると、政令市をはじめとする大きな市町では、DXを推進する専門部署を設置し、書かない窓口や手続きのオンライン化などの取り組みを進めているところもあります。一方で、小規模な市町では、脆弱な財政基盤に加え、DXの推進を担当する職員が1人しか配置されておらず、さらには複数の業務を担当するなど、独力でDXを進めることが難しい状況にあると聞いております。
人口減少が著しく進んでいるところが多いはずのこのような地域こそ、デジタル技術を活用して行政サービスの効率化をより一層進める必要があるはずであります。そのためには、県がリーダーシップを発揮し、各市町の実情やニーズを踏まえたきめ細やかな支援が欠かせないと私は考えます。
そこで、市町のDX推進に向けて、県はこれまでにどのような取組を進めてきたのか、そして、今後どのような支援策を講じていくのか、所見を伺います。
【デジタル戦略部長答弁】
県では、今後急速な人口減少が見込まれる中、市町においても限られた人員で多様化・複雑化する行政需要に的確に対応するためには、生成AI等のデジタル技術を活用して住民の利便性の向上を図るとともに、業務の効率化を進めていただく必要があると考えております。
このため、県内全ての市町が参画する行政経営研究会にICT利活用部会を設置し、DXの推進に向けた各市町の課題や要望をお聞きした上で、国が進める自治体情報システムの標準化・共通化への対応や、AIを使った議事録自動生成ツール等の共同調達など、市町のニーズに即した支援を行ってまいりました。
一方で、市町の進捗に目を向けますと、議員御指摘のとおり、財源や人手の不足により取組が進んでいない小規模市町も見受けられ、将来的に、行政サービスが持続的、安定的に提供されない地域が出てくることが懸念されます。
そこで、国の交付金を活用した財源確保や実践的なサポートを行う外部デジタル人材等の活用に向け、課題整理の段階から効果的な対応策の検討までを一貫して伴走支援することで小規模市町の取組を加速化させるとともに、共通課題へのきめ細かな支援を一層充実し、県内全ての市町におけるDXを推進してまいります。
8 職員のコンプライアンス意識向上に向けた取組について
【質問全文】
県は本年5月9日に、兼業の許可を受けず、県外の医療機関で診療を行うほか、複数の医療法人から多額の給与を受領していたとして、部長級職員を懲戒免職処分としたと発表しました。
そのほか、報道のあった直近の例だけを挙げても、3月に通勤手当の不正受給により2名が減給、1名が戒告の懲戒処分を受け、また、建造物侵入及び器物損壊並びにパワーハラスメントにより職員1人が停職の懲戒処分を受けています。昨年
9月には、過去に事務放置や文書の偽造等の不適正な事務処理を行ったとして、出先機関の職員が停職の懲戒処分を受けています。
また、昨年7月の県コンプライアンス委員会においては、令和5年度の職員の逮捕者が過去5年間で最多の3人であったと報告がされるなど、コンプライアンス違反は後を絶たない状況です。
県が職員のコンプライアンス意識の向上に取り組んでいることは承知していますが、このように不正や不適正な事務処理といったコンプライアンス違反が続出している状況では、県民の県組織への信頼はなくなってしまいます。
県は、このような職員の不祥事が発生している状況をどのように考え、今後、職員のコンプライアンス意識の向上にどのように取り組んで行くのか伺います。
【総務部長答弁】
全庁を挙げて綱紀の厳正保持に努めている中、職員の懲戒処分や逮捕が続きましたことは、これまで積み重ねてきた県民の皆様からの信頼を損なうものであり、深くお詫び申し上げます。
本県では、有識者で構成するコンプライアンス委員会や幹部職員で構成する推進本部会議を開催し、再発防止に取り組んでいるところですが、不祥事案が後を絶たない現状に鑑みますと、更に踏み込んだ取組が必要と考えております。
そこで、令和5年度から6年度にかけて、知事部局の全所属を対象に実施した全庁特別監察を踏まえ、今年度、改善が必要と判断された所属に対して、対応策の実施を確認する等、再発防止を徹底してまいります。
職員の意識啓発につきましては、管理職から一般職員へのコンプライアンスリレー研修の実施や、組織文化の改善に向けた動画の視聴等により、再発防止の実効性を高めてまいります。
県といたしましては、今後も、全庁を挙げて継続的に、職員のコンプライアンス意識の向上に向けた取組に努め、県政に対する信頼を損なうことのないよう全力で取り組んでまいります。
9 聴覚障害児の療育モデル事業の今後について
【質問全文】
先天性難聴児は出生数1,000人当たりに1人~2人とされています。しかし、聴覚障害の早期発見、早期の人工内耳等の医療介入に加え、適切な療育を行うことにより、健聴児と同等の音声言語の習得が期待できます。その一方で、国内ではこれまで人工内耳を装用した児童に対する実効性のある専門的な療育手法が十分に確立されていないことが課題でした。
このため、県では、県立総合病院と連携し、聴覚障害児療育の先進国であるオーストラリアの「シェパードセンター」の手法を取り入れた、全国のモデルとなる聴覚障害児の療育体制を構築するため、昨年11月に県、県立病院機構、シェパードセンターの三者による協定を締結したと伺っています。
難聴対策推進議連を立ち上げ、支援に向けた活動を続けてきた我が会派としても、この取組に大いに期待するとともに、聴覚障害児の療育体制の構築のための後押しを引き続きしていきたいと考えています。
本年度からは、新たにモデル事業として、県立総合病院に療育の場を開設し、シェパードセンターの指導の下、実際に聴覚障害児の受入れをスタートさせるとのことですが、今後どのように事業を展開していくのか伺います。
また、本県の新生児聴覚スクリーニング検査の受検率は97.9%と全国でもトップクラスであると伺っています。この高い受検率を活かして早期に医療介入し、着実に療育に結び付けていくことで、療育の効果を最大限に発揮することができるものと考えます。
聴覚に障害のある子供たちを効果的な療育へつなげるための仕組みづくりに向け、県はどのように取り組んでいくのか伺います。
【こども若者政策部長答弁】
県では、人工内耳を装用した聴覚障害児が、健聴児と同等の音声言語を習得できるよう、治療により得た聴覚を最大限に活用した療育体制の構築を目指し、シェパードセンターの先進的な手法を取り入れた、全国初の療育の場を8月を目途に県立総合病院に開設いたします。
具体的には、療育に係る実践的な技術・知識を習得した医師、言語聴覚士を配置し、療育を開始する予定であり、今後3年間、毎年10人程度の聴覚障害児を受け入れてまいります。このため、現在、聴覚障害児の特性や発達過程に応じた適切な療育ができるよう、シェパードセンターの指導の下、日本に適した療育プログラムを構築し、専門スタッフの養成を進めているところです。
また、議員御指摘のとおり、検査率の高い新生児聴覚スクリーニング検査体制を活かして、速やかに治療、療育につなげていくことが重要であります。このため、市町や医療機関等で検査結果を情報共有し、保護者への結果の速やかな提供や、精密検査の受診勧奨が可能となるよう、県立総合病院内に設置している静岡県乳幼児聴覚支援センターが運営するシステムの活用を、県内全市町や産科医療機関へ広げてまいります。
今後も、聴覚に障害のある子供たちが、健聴児と同等の音声言語を習得し、将来の可能性を切り拓いていけるよう取組を進めてまいります。
10 地域包括ケアシステムの充実について
【質問全文】
先日、県内の高齢化の状況が公表されました。資料を見ると、65歳以上の高齢者人口は110万人を超え、高齢化率は30.9%で過去最高であるとの報告がされております。本年、2025年は、団塊の世代が75歳以上、後期高齢者となる節目の年であり、いわゆる2025年問題として、国を挙げて様々な対策が講じられてきました。特に、医療・福祉の分野では、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築が大きなテーマとなっています。
地域包括ケアシステムは、市町が地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。しかしながら、高齢者人口や高齢化のスピードや介護事業所や医療機関の数といった地域資源の違いなどから、各市町における地域包括ケアシステムの取組状況にも差が出てきているといった課題もあると聞いています。
また、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では、団塊ジュニア世代が
65歳以上となる2040年頃をピークに、高齢者人口全体は減少に転じるものの、それ以降、2055年までは75歳以上の人口は増加し続けることが予想されています。
今後、要介護認定率や認知症の有病率等が高い75歳以上の人口増加に伴い、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ人数も増加が見込まれることから、在宅医療・介護を一体的に提供できる体制の構築とその連携がますます必要となります。このため、医療と介護の更なる連携強化に向けて、地域包括ケアシステムが果たす役割の重要性はさらに高まると考えます。
そこで、県内各市町における地域包括ケアシステムの充実について、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
【健康福祉部長答弁】
これまで、各市町は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築に取り組んできました。県内各地に
160か所の地域包括支援センターが設置され、医療、介護にとどまらず高齢者の日常生活を支える環境が整ってまいりました。
また、県は、市町の取組を支援するとともに、今後見込まれる在宅医療の需要の増加に対応するため、在宅医療圏を設定し、積極的役割を担う医療機関や連携を担う拠点を置き、地域全体を面的に支える在宅医療提供体制づくりを進めてまいりました。
一方で、医療や介護の専門職が不足し、サービスを提供する施設数に地域差が生じている中、2040年を見据えると、地域包括ケアシステムの充実を一層図る必要があると認識しております。そのため、各市町がこれまでの地域包括ケアシステムの構築状況を確認した上で、今後強化が必要なポイントを自ら把握できる点検ツールの作成に取り組んでおります。このツールを活用し、各市町が強みや弱みを把握し、地域の実情に応じた取組ができるよう支援してまいります。
県といたしましては、市町や医療介護等の関係団体との連携を強化し、地域包括ケアシステムの充実に向け、全力で取り組んでまいります。
11 閉山期間中の富士登山における消防防災ヘリコプターによる救助の有料化について
【質問全文】
今年に入ってから、富士山では、閉山期間中であるにもかかわらず、外国人の登山者による救助要請が相次いで発生し、救助活動にあたる関係機関に大きな負担をかける状況となっています。
こうした中、皆さま御承知のとおり、登山の救助活動に関する有料化の議論が、マスコミの報道などを通じて、全国的な広がりを見せています。これは、富士宮市の須藤市長が、5月9日の記者会見において、閉山期における救助に関するルールづくりを要請する考えを示したことが、1つのきっかけになったものと言えるでしょう。その後、御殿場市や富士吉田市など、県内外の首長から、救助活動の有料化に関する見解が示されています。
これらの動きを踏まえ、鈴木知事も、先月29日の定例記者会見において、閉山期の富士山での遭難救助活動の一部有料化について、今後、山梨県と協議の場を設け、課題を整理する考えを明らかにされました。また、「政治的な案件なので、役所が進めるというよりは政治のリーダーシップで進めた方がいい」として、国会議員への働きかけを行う考えも示されています。
本県と山梨県の協議において、速やかに課題の整理がなされていくことを期待しておりますが、とりわけ重要な点は、救助活動にあたる地元市町の声を真摯に受け止めた上で、現場の負担や課題など、実情を明らかにしていくことだと考えます。また、知事がおっしゃるように、救助活動の有料化を実現するには、法律による対応に向けて、国との連携も必要となるでしょう。
そこで、県は、地元市町の声を踏まえ、閉山中の富士登山における消防防災ヘリコプターによる救助の有料化についてどのように認識しているのか。そして、山梨県だけでなく、今後どのようにして、地元市町などとの間で、対話や連携を進めていくのか、県の考えを伺います。
【危機管理部長答弁】
環境が厳しい閉山期間中の富士山における無謀な登山で遭難事故が発生した場合、地元消防の山岳救助隊が命がけで救助に当たるなど、大きな負担になっております。消防防災ヘリコプターによる救助費用の有料化は、こうした無謀な登山を抑制する方策の一つ、と考えております。
このため、同じく富士山を抱える山梨県と今月6日に1回目の協議を行い、救助費用の負担を求める場合の対象や、警察ヘリコプターによる救助との整合性等の課題を共有いたしました。今後も歩調を合わせ、検討してまいります。
また、検討に当たっては、地元市町及び消防の救助活動における負担や課題を明らかにし、共有することが重要であります。このため、山岳遭難救助の実態を調査するとともに、救助の在り方についても丁寧に御意見を伺ってまいります。
一方、山岳遭難事故は富士山だけの問題ではなく、全国各地で発生していることから、国に対し、登山における規制の在り方や、統一的な救助の仕組みづくりについて要望してまいります。
12 駿河湾フェリーの利用促進について
【質問全文】
ふじさん駿河湾フェリーは、本年4月18日に、清水港発着所が日の出地区から江尻地区に移転し、フェリーの運航も3か月ぶりに再開しました。今回の移転に伴い、JR清水駅とフェリーターミナルが直結し、公共交通機関を利用したフェリー乗船が大変便利になり、利用者からの評判も大変良いと聞いています。また、フェリーの待合所が、年間100万人が来場する「河岸の市」の一画に移転したことから、「河岸の市」のお客様にフェリーを知っていただくことで、誘客効果も大いに期待できるところです。
しかし、駿河湾フェリーは、台船の故障により、現在、カーフェリーとしての運航ができず、9月中下旬まで徒歩乗船又は自転車限定による運航を余儀なくされています。
そのため、4月の駿河湾フェリー乗船実績は、徒歩乗船者数が前年度の1.6倍となり、徒歩乗船者数は大幅に増加したものの、輸送人員全体では前年度の半数程度にとどまっています。
近年の実績を見ると、駿河湾フェリーは年間5,000万円から6,000万円の赤字となっており、厳しい経営状況が続いています。今回の台船の故障は、利用者の減少に追い打ちをかけるものであり、更なる経営の悪化に繋がりかねないと、強い懸念を抱いております。
駿河湾フェリーは、観光面のみならず、有事の際の輸送手段として、伊豆半島地域の住民からの期待もあることから、駿河湾フェリーの経営安定化に向け、台船が復旧するまでの間、いかにして徒歩乗船者による利活用促進を図るかが大きな課題です。また、台船復旧後の利用者拡大に向けた取組についても、今から準備をしておく必要があります。
そこで、駿河湾フェリーの経営安定化の鍵となる利用促進について、どのように取り組んでいくのか伺います。
【スポーツ・文化観光部長答弁】
フェリー運航再開後2か月間の利用実績は、前年同期比で4割弱の水準にとどまっており、フェリーの経営安定化に向けては、議員御指摘のとおり、徒歩乗船者や台船復旧後の車両乗船利用者の更なる拡大に向けた取組を強化していく必要があります。
徒歩乗船者の拡大に向けては、フェリーターミナルとJR清水駅が直結した利便性の良さを周知するため、SNSを活用したプロモーションや、静岡駅前の商業施設と連携したキャンペーン、JR鉄道沿線での広報を行っております。あわせて、旅先での移動を円滑にするための船内での電動自転車の貸出しなどにも取り組んでおります。
また、台船復旧後の利用拡大に向けては、乗船を旅の目的地化する新たなブランド価値の創造、環駿河湾地域での旅先納税を活用したデジタル地域通貨の導入、土肥港周辺でのスムーズな移動のための電動モビリティの導入など、人やモノの流れを創出する新しい取組も推進してまいります。
徒歩乗船に限られる厳しい状況の中でございますが、地元の市町、民間企業と連携し、駿河湾フェリーの経営安定化に向け、全力で利用促進に取り組んでまいります。
13 米国の関税措置による県内経済への影響を踏まえた今後の対策について
【質問全文】
米国のトランプ大統領は、本年4月3日に、日本からの輸入品に対し24%の相互関税を適用する旨を発表し、また、自動車についても、25%の追加関税措置を発動しました。相互関税の上乗せ分については、90日間の一時停止をしましたが、10%の一律関税については維持するとしています。これは、自由貿易体制に反するものであり、我が国の産業・経済、そして、世界経済情勢に大きな影響を及ぼしかねない状況になっています。
今回の関税措置により、本県経済の基幹である自動車産業をはじめとした製造業のみならず、農林水産業やサービス産業なども含め、多くの事業者や県民が、今後の景気動向に不安を抱いていることと思います。
我が会派は、県民の生活と県内の事業者を守るため、4月15日に、「県内への影響の分析と県民や県内事業者向け情報発信の強化」「きめ細かな相談対応」「資金繰り支援をはじめとした支援策の構築」という3項目を柱として、鈴木知事に緊急要望を行いました。
県では、4月9日に、中小企業や農林水産業者の経営、資金繰り等に関する「米国追加関税措置対応相談窓口」を設置しました。また、米国の関税措置による県内経済への影響の把握・共有を図り、今後直面する課題への対策につなげるため、国や経済・金融関係団体から成る静岡県米国関税対策連絡会議を4月25日と
今月11日に開催し、相談窓口に寄せられた意見や企業への聞き取りの結果などについて、情報交換を行っています。
そこで、連絡会議などを通じて把握した本県経済への影響を踏まえ、今後、県としてどのような対策を考えているのか伺います。
【知事答弁】
トランプ政権による関税措置は、自由貿易体制の根幹を揺るがすものであり、世界経済に甚大な影響を及ぼすことが懸念されております。先行きへの不透明感が増す中、関税の影響が生じた際には速やかな支援が可能となるよう、機動的に対策を講じていく必要があります。
このため、県議会各会派から頂いた御要望や、経済界、金融界、産業支援機関等で構成する「静岡県米国関税対策連絡会議」における御意見等を踏まえ、当面の対応として、関税の影響を受ける県内事業者への対策をパッケージとして取りまとめました。
連絡会議では、現時点で顕著な影響は見られないものの、国内生産の減退や、景気悪化による需要減少など、先行きを不安視する声が多く寄せられました。このため、まずは、中小企業や農林水産業者に対するきめ細かな相談対応を行うための体制を整備するとともに、令和7年度当初予算に計上された事業を十二分に活用し、事業者の資金繰りや生産性向上の取組などを支援しております。
また、今月11日には、円滑な資金調達を図るため、中小企業向けの県制度融資の要件緩和や融資限度額の拡大を実施したほか、関税の影響下にあっても、コスト上昇分を適切に価格に転嫁するよう、私から、関係団体に呼び掛けを行ったところであります。
こうした取組に加え、中小企業等の資金繰り支援に万全を期すため、県制度融資の融資枠を拡大するとともに、関税措置に対応した事業者の新たな取組等を支援するため、補助制度の拡充などを行うこととし、必要な経費を6月補正予算案に計上し、本議会でお諮りしております。
引き続き、関税措置を巡る国内外の動向や県内経済への影響を冷静に見極めつつ、国の対策と連動し、必要な対策を躊躇することなく、スピード感を持って講じてまいります。
14 基幹作物の安定生産に向けた気候変動への対応について
【質問全文】
近年の気候変動による気温上昇は、農業にも深刻な影響を与えています。気象庁によると、昨年は、明治26年の統計開始以降、最も暑い年となりました。
特に、夏場の猛暑の影響により、野菜が生育不良となり、収穫量が低下したことで、トマトやキュウリ、ピーマンなどの野菜の価格が高騰しました。
記憶に新しいところでは、農林水産省の食品価格動向調査によると、キャベツの1月上旬の1キロ当たりの小売価格が、過去5年平均のおよそ3.3倍になり、
1玉500円を超える価格になりました。
知人のコメ生産者に話を聞いたところによると、気温が年々上昇していることを踏まえ、田植えの時期を従来よりも早めるなどの対策を取っているものの、それでも生育状況が芳しくないとのことです。
本県においても、高温、集中豪雨、干ばつなどにより、コメやみかん、イチゴ、花き、わさびなどの基幹作物において、収穫量の減少や品質の低下などの影響が出ています。
令和2年以降は、毎年、過去30年間の平均気温を上回る暑い夏となっており、今年の夏の気温も、高くなる見通しであると気象庁は発表しました。
そこで、本県の基幹作物における安定生産のための気候変動への対応について、今後、県は具体的に、どのように取り組んでいくのか伺います。
【農林水産統括要旨】
県では、従来から、コメの「にじのきらめき」、ワサビの「ふじみどり」など、高温耐性品種の開発や普及を図ってきましたが、最近の想定を超える猛暑を踏まえ、一層の対策が急務であると認識しております。
まずは、今年の対策として、すぐに実践できる技術の速やかな普及を図る必要があります。このため、昨年生産者が実践し、成果を上げた取組として、ハウス内を強制的に換気し、ミニトマトの年内収量が増加した技術などを「暑さ対策事例集」に取りまとめました。
この事例集や、ミカンの日焼け対策などの品目別の既存技術が個々の生産者にいち早く届くよう、農協と連携した実践的な講習会や農林事務所の普及指導員による現場指導など、様々な手法で、効果的に普及を進めているところです。
また、新技術の確立も急ピッチで進める必要があります。今後2年間で、高温下でも早期に開花し、年内収穫が可能なイチゴの品種登録申請や、コメの用水管理技術の確立を実現してまいります。
県といたしましては、現場に即した様々な高温対策を速やかに開発、普及し、気候変動への対応にスピード感を持って取り組んでまいります。
15 県警察のサイバー犯罪対策への取組について
【質問全文】
今やサイバー空間へは、地域、年齢、性別を問わず誰もが参加可能であり、クレジットカードの電子決済、SNSの利用等、身近な生活に密接に結びついています。また、公共空間である金融、航空、鉄道、医療等といった国民生活や社会的経済活動を支える基盤となる機能から、警察や防衛といった治安や安全保障にかかわる国家機能に至るまで、あらゆる場面で実空間とサイバー空間の融合は日々進んでいます。
一方で、サイバー空間の脅威は、我々の日常に潜んでおり、フィッシング詐欺、個人情報の流出やウイルス感染など、知らないうちに我々の生活を脅かしております。実態として、インターネットバンキングの不正送金、フィッシング、ランサムウェアといったサイバー犯罪の件数は、年々増えており、今や身近な犯罪と言っても過言ではありません。
警察庁によれば、全国におけるインターネットバンキングの不正送金の被害額は、平成30年は約4億6千万円だったものが、令和5年及び令和6年は、いずれも
約87億円と20倍近くになっており、深刻な状況にあります。
そこで、サイバー犯罪対策は、我々の平穏な日常生活を確保する上で、非常に重要な対策となってくる訳でありますが、サイバー犯罪の手口は、日々、高度化・巧妙化し、全国的にもサイバー犯罪の件数は、増加の一途をたどり続け、個人情報の流出、ネット詐欺、企業や行政機関に対するサイバー攻撃が深刻な社会問題となっており、それらの対策は待ったなしの情勢となっています。
そのような情勢の中、県警察では、サイバー空間の脅威への対処能力強化のため、本年春から生活安全部から独立した警察本部長直轄の「サイバー対策本部」を立ち上げ、大幅な体制強化を図ったと承知しています。
そこで、サイバー対策本部の今後の運用を含め、サイバー犯罪対策への県警察の取組について警察本部長に伺います。
【警察本部長答弁】
サイバー空間をめぐる脅威は極めて深刻な状況にあり、特に当県は、サイバー攻撃の対象となり得る重要インフラや中小企業を多数擁するなど、サイバー犯罪対策の強化が急務となっております。
そこで、県警察では、今春の組織改編において、本職直轄組織「静岡県警察サイバー対策本部」を新設し、高度な知識・技術を要するサイバー事案に対処していくほか、サイバー部門以外の事件主管課のみでは対処が困難なサイバー事案に対して部門横断的な捜査支援を柔軟かつ機動的に行えるよう体制を強化しました。
また、より高度な解析技術を要するサイバー事案に対応するとともに、限られた人的・物的リソースを効率的に活用するため、国の機関である情報通信部情報技術解析課をサイバー対策本部と同一フロアに集約し、解析業務の一体的な運用を図ったところです。
さらに、警視正を配置し、国の機関であるサイバー特別捜査部や全国警察との連携を強化したほか、官民連携によるサイバーセキュリティ対策を一層推進することとしたところです。
今後、これらサイバー対策本部の機能を効果的に運用し、高度化・巧妙化の一途をたどるサイバー空間の脅威に対処すべく取り組んでいくとともに、県一体となって、サイバーセキュリティの向上が図られるよう努めてまいります。
16 新県立中央図書館の整備について
【質問全文】
新県立中央図書館の整備に関しては、先日の知事提案説明において、「一旦立ち止まり、プロジェクトチームを立ち上げて整備方針を見直す」旨の方針が示されました。このような状況に至った原因は、皆様御承知のとおり、財源の問題が明らかになったからです。
教育委員会の説明によれば、総事業費298億円に対する財源として、国土交通省の社会資本整備総合交付金を136億円充てる見込みが、申請自治体の急増などのため、34億円程度の交付にとどまり、県の実質負担額は138億円から241億円と、当初予算に対し103億円増える見通しとのことであります。
また、このほかの交付金が確保された場合であっても、財源不足が生じる見込みと伺っています。
結果的には不調となりましたが、昨年度、一度入札手続まで進んだ案件に対し、なぜ、今になってこのような話が出てくるのか、常識では考えられない事態となっております。
現図書館は老朽化及び狭隘化の問題も抱えていることから、早急に今後の方向性を示す必要があります。
ついては、交付金に関する国土交通省とのやりとりの経緯と、当初の想定を大幅に下回る金額しか確保できなかった要因を伺います。また、今後、施設規模、スケジュールなど、どのような考え方や方針により見直しを進めていくのか、教育委員会の考えを伺います。
【教育長答弁】
昨年11月の入札不調の後、再入札に向けて準備を進めてまいりましたが、社会資本整備総合交付金の見通しが大きく変わりました。県民の皆様に多大な御心配をお掛けしていることにつきまして、お詫び申し上げます。
県教育委員会では、令和2年に国土交通省に対し、全体事業費と交付要望金額を記載した計画を提出した後、この計画を前提として、交付対象の範囲など、定期的な協議を行っておりました。
しかし、令和7年1月、「県からの要望に全額応えることが困難である」旨の連絡があったため、その後、状況の把握と協議・交渉を重ねてまいりましたが、4月下旬、当初見込んでいた交付金額を確保できないことが明らかになったものであります。
国土交通省からは、「コロナ禍で止まっていた事業の動き出しがあったこと」や、「物価高騰に伴う財源確保の必要性」などから、多くの自治体からの申請があり、予算枠がある中、交付額については公平性に配慮する必要があるとの説明を受けております。
今回、交付金の確保においては、他の自治体の申請状況や交付実績などの確認に不十分な点があったと反省をしております。
現状を踏まえ、新県立中央図書館の整備につきましては、現在の計画で進むのではなく、一旦立ち止まって、整備方針を見直すことにいたしました。
議員御指摘のとおり、現図書館の老朽化・狭隘(きょうあい)化対策は急務であるとともに、東静岡駅周辺地域の拠点となる新図書館の整備は必要と考えております。
今後、デジタル技術の進展などの社会情勢の変化や、関係の皆様の御意見も踏まえながら、部局横断的なプロジェクトチームにより、施設規模や機能、スケジュール等の検討を進め、年内を目途(もくと)に具体的な方向性をお示ししてまいります。
県教育委員会といたしましては、今後、関係者との調整や情報収集をより丁寧に行いながら、改めて、全ての県民が利用でき、身近に感じてもらえるような魅力ある図書館づくりを進めてまいります。
【再質問1】
昨年、債務負担行為を設定する前に、社会資本整備総合交付金確保について、具体的にどのような努力をしたのか伺う。
【教育長答弁】
社会資本整備総合交付金を満額確保できると見込んだ理由と、見込みが甘かったのではないかという質問に関しては、社会資本整備総合交付金については、毎年度、国土交通省のヒアリングを受け、総事業費の増加に併せて、金額変更の理由や、交付金の対象となる工事の範囲など、工事の中身について話をしておりました。
この間、交付金額の話は出ておらず、また、要綱上、上限額の明示がなかったので、申請額どおり、交付金がいただけるものと見込んでおりました。
議員御指摘のとおり、他の自治体の申請状況や交付実績などの確認に不十分な点があり、見込みが甘かったものと反省しております。
【再質問2】
教育委員会の試算だと、現状のまま建設しようとすると、仮に第2世代交付金が63億円確保できたとしても、公共事業債が39億円減額し、一方で、単独債が54億円、一般財源が24億円それぞれ増額となることになっている。
一旦立ち止まって整備方針を見直すとのことだが、見直しにあたって、財源に関して、教育委員会はどのように考えるのか伺う。例えば、県債や一般財源については、現計画よりも増額しないというような基準を設けるのか。
【教育長答弁】
今後のプランについては、現時点ではまだ流動的なところが多く、歳出規模については、プロジェクトチームにおいて、必要となる機能や規模等についてしっかりと見極めた上で、検討してまいります。
県財政の厳しい状況を踏まえて、引き続き、国の交付金を最大限活用するほか、民間投資の可能性を探るなど、財源を確保していきたいと考えております。
また、交付金を見込む場合には、これまで以上に、丁寧に国と確認することにより、確実な確保に努めてまいります。
【要望】
社会資本整備総合交付金に関してですが、予算に計上するに当って、事前に国や他の自治体に、最近の実際の交付率について確認することを怠ったことが、今回の事態を招いた最大の要因だと私は思います。外部に要因があったのではなく、内部に要因があったのではないですか。
また、財源に関してですが、現計画は国の交付金が136億円交付されるという前提での計画ですので、これが34億円しか入ってこないということは、計画を見直さざるを得ないと思うのですが、見直すにあたっては、短絡的に単独債や一般財源を増加させることがないように要望します。
最後に知事に要望ですが、今後、同様の事態を招かないために県としてしっかり対策を取っていただくよう要望いたします。
