令和5年9月定例会 一般質問

静岡県の公式ホームページから動画を視聴できます。

https://shizuoka-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=1257

1-(1) 移住・定住の促進についてのうち子育て世代のさらなる移住促進に向けた取組

【質問全文】

少子高齢化が急速に進行する中、様々な社会的・経済的な課題が深刻化しています。昨年度設置された「移住・定住等促進特別委員会」においては、様々な関係者から、現状や課題を聴取し、移住・定住の促進等による社会増の実現に向けた提言を行っています。

本県では、令和4年度の移住者数が2,634人となり過去最多を記録しました。また、ふるさと回帰支援センターが公表する「移住希望地ランキング」で3年連続1位となるなど、移住施策に関して、一定の成果を上げていると思います。一方で、総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京圏に対しては、10歳代、20歳代を合わせて、毎年6,000人程度の転出超過が継続するなど、若年層をはじめとした転出超過の状況は依然として改善しておらず、移住や定住が着実に進んでいるという実感があまりないのが現状です。

将来にわたり持続可能な地域を実現するためには、多様な人の力が求められます。地域の暮らしに惹かれて移住した若い世代が、新しいまちづくりの担い手となり、刺激を受けた地域住民が活力を取り戻し、さらに移住者が増えるという好循環を創出していくことが移住施策の目的と考えます。

そのためには、本県への移住を希望する方が、その希望を着実に実現できるよう、移住に関する相談体制を充実し、情報発信を的確に行っていくことはもちろんのこと、仕事と子育ての両立や安心して子育てができるなど、子育て世代が望む生活スタイルや、暮らしやすい環境、受け皿を整えることが重要であると考えます。

大都市圏へのアクセスの良さと豊かな自然環境をあわせ持つ本県は、移住希望者にとって魅力的な地域です。より一層、若者や子育て世代に選ばれるよう、県内市町や関係団体等と連携した取組を進めていくことが不可欠と考えますが、今後どのように取り組んでいくのか、県の所見を伺います。

【答弁内容】

多様な暮らし方や働き方への関心が高まり、住まいもその一つの選択肢となっている中で、本県への移住者数は年々増加しており、移住した世帯主の8割を超える人たちがは30代前後の子育て世代となっております。将来にわたり持続可能な地域形成を実現するためには、この世代を更に呼び込んでいくことが重要でありまして、そのための対策を考慮する必要があると考えております。

まず、移住後の住まいにつきましては、「ふじのくに空き家バンク」や市町等による空き家案内ツアー、住宅リフォーム支援制度の活用を促進しながら、本県の豊かで広い暮らし空間を提供し、快適な暮らしの実現の後押しをしてまいります。また、仕事につきましては、県内企業への就職をはじめ、起業やテレワークといった多様な働き方に対する支援を行ってまいります。

子育て世代への対応につきましては、子育て経験のある先輩移住者グループによる伴走支援や、移住者同士や地域住民との交流の場を設けるなど、移住者に寄り添って移住生活をサポートする取組を広げながら、移住者が地域に円滑に溶け込める環境づくりを進めてまいります。

子育て世代が抱く、移住後の住まいや仕事、子育てに関する不安や疑問に、東京の移住相談センターと市町や関係団体との連携体制を生かしまして、丁寧に対応してまいります。

あわせて、SNSや首都圏で開催するセミナー等を通じて、本県が子育て世代にとって魅力的な地域であることを引き続き情報発信してまいります。今後は、保育に関する情報や子供の遊び場、地域の行事など、より具体的に移住後の暮らしをイメージしていただけるように、子育て世帯の関心に応える情報の強化を図ってまいります。

多彩なライフスタイルが実現できて、子育て世代が暮らしやすい地域として、引き続き多くの方々に本県を選んでいただけるよう、移住・就業支援金も活用いたしまして、市町や地域団体等と連携しながら、更なる移住・定住を促進してまいります。

1-(2) 若者のUターン就職の促進

【質問全文】

静岡県の人口減少が止まりません。県の推計人口では、令和4年は358万2,194人で、ピークであった平成19年の379万6,029人から21万3,835人減少しています。15年間で、沼津市の人口を超える人数が減少しました。昨年は1年間で2万4,602人減少しており、減少数では全都道府県で多い方から3番目であります。

人口減少の要因の一つに若者の県外への流出が挙げられます。「しずおか産学就職連絡会」がまとめた、2022年春に卒業した大学生の就職状況によりますと、大学入学者の30%が県内の大学に進学し、その内県内に就職した学生は84%を占めますが、70%を占める県外の大学に進学した学生のUターン率は36%であり、特に首都圏の大学に進学した学生のUターン率は31%に止まっています。県内出身者全体の県内就職率は51%で、大学に進学した2人に1人が県外に流出しております。

また、「静岡新聞」によりますと、大学生の2人に1人が奨学金を借り、その多くが返済の必要な貸与型であり、平均受給額は300万円を超え、返済期間は15年に及ぶということです。「労働者福祉協議会」の調査では返済中の3割強が「結婚や出産の人生設計に影響している」と答えています。

人口減少をいかに抑えていくかは本県にとって大きな課題であり、中でも、進学等により県外へ転出した若者を呼び戻すことは喫緊の課題と言えます。県は「ふじのくにパスポート」や「30歳になったら静岡県!」に取り組み、若者の就職支援を行っており、今年度からは大学生の取材による企業情報誌を発行するとも聞いております。しかし、若者のUターン就職を促進するためには若者に対して、より直接的な支援が必要であります。そこで、若者の本県での活躍を後押しするとともに、県内事業所の人材確保を図るため、県内に就職した学生の奨学金の返済を支援する制度の創設が有効だと考えます。すでに市町単位で実施しているところもありますが、県が土台を作り、その上に市町が工夫を凝らすような仕組みが理想的であり、大切なのは静岡県が一つになって若者のUターン就職に取り組んでいるという姿勢を示すことであると考えますが、県の所見を伺います。

【答弁内容】

県ではこれまで、若者のUターン就職を促進するため、学生向けには「ふじのくにパスポート」を活用して、社会人向けには「30歳になったら静岡県!」をキャッチフレーズとして、本県の暮らしの魅力や県内の企業情報の発信などに努めてまいりました。今年度はこれらに加え、首都圏大学に向けた広報の拡充などにも取り組んでいるところであります。

このような中、国は、来年度から、移住・就業支援金制度の対象を学生に拡大する方針を明らかにしました。具体的には、奨学金の返済負担軽減等を通じた少子化対策の一環として、地方の中小企業に就職する都内大学の卒業生に対し60万円を支給する方針で、本県におきましても、学生のUターン就職促進施策に活用してまいりたいと考えております。

議員御指摘の学生の奨学金返還支援制度につきましては、支援内容は様々でありますが、現在、県内の14市町において実施されていると承知しております。

県といたしましては、県内市町の奨学金返還支援制度や、来年度創設される大学卒業生向け移住・就業支援金の若者のUターン就職に対する効果などを踏まえ、学生に対する経済面の支援策について、引き続き、研究してまいります。

【要望】

人口減少対策として若者のUターン就職を促進するために、Uターンした学生の奨学金の返還に支援することを提案する。

2 多文化共生社会推進のための日本語教育

【質問全文】

多文化共生社会を推進するうえで、最も大きな課題は言葉の壁であると言われますが、本県では初期日本語教室を実施し、外国人に簡単な日本語を理解してもらうよう努めています。

しかし、現在の初期日本語教室だけでは十分と言えず、各市町においては行政や国際交流協会等が独自に日本語教育について施策を展開しています。先月8月4日に開催された、大井川以西の8市1町でつくる「遠州広域行政推進会議」でも、日本語教育の充実のために、国や県が更なる支援を行うべきだという意見が相次ぎました。

私の地元菊川市では、7月現在、不就学の外国人児童生徒17人が就学準備のため「虹の架け橋」という外国人児童生徒のための教育推進支援を受けています。この事業は平成22年度から5年度間は国の委託事業として実施されていたものですが、現在は市町の事業として国庫補助を受けながら運営されており、菊川市は、隣接する掛川市、御前崎市と3市で共同し、NPO法人に委託して実施しています。県内では、他にも焼津市や牧之原市で同様の事業が行われています。

虹の架け橋教室では、ひらがな、カタカナ、小学1年生で習得する漢字などの日本語の初期指導とともに、掃除や朝の会など日本の学校スタイルを取り入れた指導を行い、小中学校で学ぶための準備をしています。また、地域と交流することで日本文化を体験するなど、日本語がわからない不就学の子どもたちには必要不可欠な存在となっていますが、定員をオーバーし入所できずに待機する児童生徒が出てくるなど、教室数の増加や充実した施設の設置等が望まれています。

今年の6月9日、閣議決定により特定技能2号の在留資格が建設、造船・舶用工業の2分野から自動車整備、宿泊、外食業等11分野に拡大されました。これに伴い、専門技術を持つ外国人人材の在留期間の上限が撤廃され、家族の帯同が可能になるなどの規制緩和により、これまで外国人があまりいなかった地域においても今後は外国人の方々の増加が見込まれ、人口減少が進む本県では貴重な存在であり、県内各地で外国人の日本語教育に取り組む必要が出てくると考えます。

しかしながら、地域資源の違いにより独自の取組にも限界があり、県として、より広域的な立場から各市町がどんな取り組みを行い、どんな課題を持っているのかしっかりと把握したうえで対応することが求められるのではないでしょうか。

地域や年齢の違いに関わらず、全ての外国人が日本語で必要なコミュニケーションがとれる多文化共生社会の実現に向け、市町の日本語教育推進体制の構築に、県として積極的に関わっていくことが必要と考えますが、今後の取組について伺います。

【答弁内容】

県内では、各市町が地域の実情に応じた日本語教育を実施しておりますが、県は、対話交流型日本語教育を実施する市町に対して、指導者の養成、学習教材の提供、コーディネーターによる教室運営方法調整等の支援を行い、外国人県民が生活に必要な最低限の日本語を身に付けることができるよう、日本語教育推進体制の構築を進めております。

議員御指摘のとおり、国の在留資格制度の見直しにより、今後は外国人集住都市以外にも外国人の増加が見込まれ、県内に9町ある日本語教室「空白地域」の解消が課題となります。県は、意向調査により市町の実態把握をしておりますが、空白地域の町からICT教材の活用希望があったことを受け、本年度、教材に加え、オンラインによる双方向型での日本語教室を空白地域で開催する予定です。

「虹の架け橋」教室につきましては、外国人児童生徒の就学準備支援として成果を出していると認識しております。国の補助金に加えまして、県が事業費支援をすることは困難ですが、県教育委員会において、市町との役割分担を踏まえまして、日本語指導が必要な児童・生徒が、能力に応じた日本語及び教科指導を受けられるよう、小中学校への十分な教員の配置や、支援員の派遣等に努めておりまして、市町には、自動翻訳機の貸与等を行っております。

県といたしましては、空白地域の解消に向けて、ICT教材の活用や広域による日本語教育の実施を提案していくとともに、県内市町に寄り添い、意見を聞き、連携しながら、地域の課題に対応することで、市町の日本語教育推進体制の構築を支援してまいります。

【要望】

県教育委員会において、市町との役割分担を行ったということだが、それはリーマンショックによる世界同時不況で多くの外国人が国に帰られ外国人の数が減少した平成26年のことで、その後再び外国人の人口は増えている。話合いが行われた時とは社会状況が変わっているので、改めて話合いをしていただきたい。

3 原子力災害時の広域避難計画の実効性の向上

【質問全文】

平成23年3月の福島第一原子力発電所事故では、多数の住民の方々が避難を余儀なくされました。事故から12年半が経過していますが、未だに原子力緊急事態宣言が発出されたままであり、帰還できない地区が残っています。

この教訓を踏まえ、他の原子力発電所の立地地域と同様に、浜岡原子力発電所における原子力災害に備えて、県は、浜岡地域原子力災害広域避難計画を策定し、これを基に、発電所から31km圏内である原子力災害対策重点区域に位置する11の市町は、それぞれの避難計画を策定し、実効性の向上に取り組んでいます。

私の地元である菊川市は、市全域が原子力災害対策重点区域に含まれており、平成31年3月に広域避難計画を策定していますが、市が開催した住民説明会では、バスの手配や交通渋滞、要配慮者の避難方法、避難経路での検査等について、住民から様々な不安の声が寄せられていました。

県の広域避難計画には、今後、検討及び関係機関との協議を進める課題として、「避難経路及び避難手段の確保における関係機関との協力体制の強化」、「避難経路での燃料の確保、渋滞対策、降雪対策」等が挙げられており、昨年度、県が実施した原子力災害時における県民の避難意向調査においても、同様の課題が指摘されています。また、本年6月の定例会では、北陸地方など降雪地域への避難について取り上げられ、議論されたところです。

浜岡原子力発電所の周辺地域に住まわれている方々をはじめ、県民の皆様の安全・安心のためには、これらの課題の解決に絶えず取り組み、避難計画の実効性の向上を図っていく必要があると考えますが、現在の県における検討状況、今後の具体的な取組について伺います。

【答弁内容】

浜岡原子力発電所における原子力災害に備え、県及び関係11市町は、策定した広域避難計画の実効性の向上を目指し、広域避難の拠点となる避難経由所や避難所の運営マニュアルの作成など、運営体制の充実に向け、避難先自治体や関係機関との協議を進めているところであります。加えて、降雪対策や要配慮者の避難対策、避難経路・避難手段の確保における関係機関との協力体制の強化、渋滞対策等の広域避難に係る課題の解決に取り組んでおります。

まず、降雪対策につきましては、避難途中に自家用車を一時的に預ける駐車場所を準備し、バス等に乗り換えて避難する方法を検討しており、現在、この方法を実現するため、駐車場所や移動手段の確保に向けて、施設管理者や交通関係機関、関係自治体と協議を進めております。

要配慮者の避難対策につきましては、原子力災害時に要配慮者が一時的に屋内退避を行うことができるよう社会福祉施設や避難所の放射線防護対策を進めているほか、市町と連携し、県が作成したガイドラインを活用した説明会や個別訪問を行い、社会福祉施設等の避難計画の策定を推進しております。

避難経路等における関係機関との協力体制の強化や渋滞対策につきましては、今年度、エリアメールや、スマートフォンによるQRコードの読み込みを使用した「原子力災害時避難情報発信・集約システム」の開発を進めております。住民の方々への避難情報の確実・迅速な伝達、避難状況のリアルタイムでの集約による関係機関との効率的な連携を可能とすることで、円滑な避難の実施に結び付けてまいります。また、開発後は、原子力防災訓練等で検証を重ねながら、運用体制を強化してまいります。

県といたしましては、今後とも県と関係市町が一体となって、国の支援、避難先自治体や関係機関の御協力を得ながら、広域避難計画の実効性の向上に取り組んでまいります。

4 水田農業の経営の安定

【質問全文】

全国的に米の消費が減少し続けており、国が公表する米の1人当たりの年間消費量によると、令和4年度は50.9㎏であり、私が社会人として勤め始めて間もない昭和58年の75.7㎏に比べ、40年間で24.8㎏、32.8%も減少しています。

また、最近公表された令和4年度の食料自給率は、カロリーベースで38%と横ばいで推移し、金額ベースは過去最低の58%となり、農林水産大臣も記者会見において「海外依存度の高い小麦、大豆、飼料作物等の生産拡大を着実に進めていきたい。」と述べています。

このような情勢下において、国は、需要に応じた米の生産を進めるとともに、水田を活用した麦、大豆、飼料用米などの生産拡大を、「経営所得安定対策等による交付金」により進めており、私の地元である遠州東部地域においても、農業者が飼料用米や小麦の生産に取り組んでいます。

一方、飼料用米については、令和5年産から交付単価の算出方法が見直され、令和6年産からは、国が認める品種以外は支援額が段階的に引き下げられることとなったため、飼料用米を生産してきた農家に不安が生じており、何らかの対応が必要ではないかと考えます。

加えて、ウクライナ紛争など海外の情勢不安を背景に、食料安全保障への関心が高まっており、国産小麦の生産を拡大していこうとする動きがあるなかで、収量の増加や品質の向上による生産力の強化に取り組むことは、時間を要してでも進めていく必要があると考えます。

そこで、本県においても、飼料用米や小麦の生産を支援することは、水田農業の経営安定につながると考えますが、県の所見を伺います。

【答弁内容】

本県耕地面積の約1/3を占める水田をフル活用し、需要に応じた主食用米の生産に加え、飼料用米や小麦等の戦略作物を生産をすることは、水田農業の経営安定や食料の安定供給など、本県の農業振興において大変重要と考えております。

県ではこれまで、水田で戦略作物を生産する農業者に対して、交付金を助成する国の経営所得安定対策等を活用し、生産構造の転換を促進してまいりました。一方、今年度から国の交付単価等が縮小された飼料用米と小麦につきましては、県独自に交付対象を設定できる産地交付金による支援の拡充に向けて、国や市町との協議を進めてまいります。

飼料用米の生産拡大に向けましては、農業者の生産計画に即応できるよう、JA等と連携し、国が認める専用品種の種子の確保に取り組んでいるところであります。加えて、小麦との二毛作におきましても、安定した収量が確保できる新品種の選定を進めており、令和6年産から対象品種に認定されるよう、国との手続を進めてまいります。

また、畑作物である小麦につきましては、生産量の増加や品質の向上を図るため、排水性を高める暗渠排水等の基盤整備により、水田の汎用化を進めるとともに、肥料の適正量や適切な施用時期の実証試験にも取り組んでおり、最適な栽培手法を生産現場に普及拡大してまいります。

県といたしましては、飼料用米や小麦等の生産拡大を支援し、水田農業の経営安定と食料の安定供給を図ることで、本県農業の持続的な発展を実現してまいります。

5 菊川水系における水害対策

【質問全文】

近年、気候変動の影響による降雨量の増加により、全国各地で浸水被害が頻発しており、本県においても昨年9月の台風15号や今年6月の台風2号などにより県内各地で大きな浸水被害が発生しました。私の地元菊川市も例外ではなく、令和元年10月の台風19号では、一級河川菊川の支川黒沢川や江川の周辺地域において、内水氾濫により42戸が床上浸水するなど大規模な被害が発生しました。菊川水系の中でも黒沢川流域はこれまでも大雨のたびに家屋への浸水を繰り返しており、この地域の住民にとって浸水対策は以前からの悲願であります。

一級河川菊川水系は、昭和42年の菊川本川の一級河川指定及び直轄管理区間への編入から、数回にわたる支川の直轄管理区間への編入を経ながら、河川改修が進められてきました。現在、直轄管理区間では、国が平成29年に策定した「菊川水系河川整備計画」に基づき、堤防の整備や河道掘削、横断工作物の改築などの治水対策を実施し、浸水被害の防止が図られています。

激甚化・頻発化する水害に対して、国は、令和2年に、流域のあらゆる関係者が協働して、総合的かつ多層的な水害対策に取り組む「流域治水」を推進することとしており、令和3年には、流域治水の実効性を高めて強力に推進するため、流域治水関連法を一体的に改正し、特定都市河川の指定拡大などを図っています。

これまで菊川水系では、直轄管理区間においては河道掘削や防災ステーションの整備などに取り組んでおり、支川の県管理区間や市管理河川及びその流域においてもハード・ソフトの水害対策を、国・県・市などの関係者が連携して着実に実施することが求められます。菊川市としても黒沢川流域にある市立岳洋中学校の校庭を利用した校庭貯留施設の建設などに取り組んでおります。

そこで、菊川水系における水害の軽減に向け、今後、県としてどのように取り組んでいくのか伺います。

【答弁内容】

菊川水系は25河川、延長約122kmが一級河川に指定されており、このうち県は、支川や菊川本川の上流部など延長約85kmを管理しております。この県管理区間では、河川整備計画に基づき、西方川、稲荷部川、亀惣川における川幅の拡大などの河川改修や、その他の河川における浚渫などの治水対策を実施してまいりました。

近年の激甚化・頻発化する水害に対し、菊川水系では、令和2年7月に国や県、関係市による「菊川流域治水協議会」を設置し、令和3年3月に流域治水対策の全体像を示す「菊川水系流域治水プロジェクト」を策定いたしました。今後とも、この計画に基づき、各河川の特性に応じた河川改修、落差工や堰の改築、水田貯留などの対策を、協議会において進捗管理を行いながら、流域の関係者が連携して実施してまいります。

また、市街化が進み、内水被害が頻発している黒沢川流域につきましては、早期の浸水被害軽減のため、雨水貯留浸透施設などの整備の加速化や、土地利用規制が可能となる「特定都市河川」の令和6年度の指定を目指し、国、県、菊川市による調整を進めてまいります。

県といたしましては、菊川水系における浸水被害の軽減に向け、「流域治水」の考え方に基づくハードとソフトの対策を、国や関係市と連携して進めることにより、水害に強い地域づくりに努めてまいります。

【要望】

県管理河川の整備と管理については、財源をしっかり確保して取り組むべきである。安全・安心な社会の実現のため県管理河川の整備をさらに加速化して進めていただくようお願いする。

6 県管理河川における堤防の草刈り

【質問全文】

河川環境の保全は、単なる治水機能の確保に留まらず、私達の暮らしに潤いと安らぎを与える水辺空間の創出としても大変重要なものです。また、洪水が激甚化・頻発化する近年において、堤防の健全性を確認する上で、定期的な除草等、適切な維持管理が必要であると認識しています。

県では、これまで地元住民や河川利用者との協働のもと、清掃や除草等の河川美化を行うリバーフレンドシップ制度を導入し、その活動を支援してきました。

しかし、近年の人口減少や高齢化、生活様式の変化等により、地域によっては自治会等による除草の継続が困難になっており、自治会が経費を負担し業者に委託したり、作業に参加できないお年寄りなどは、代わりにお金を払って作業をしてもらっているとの話も聞いています。

私の地元の菊川市を流れる一級河川江川の一部にも、河道内に丈の長い草が繁茂し、堤防斜面の地面部分が見えなくなるなど、早期の対応が望まれる箇所もありますが、自治会等で対応する場合、こうした場所の除草には、危険が伴い、多大な労力を要すると聞いています。

知事は「森は海の恋人」だとおっしゃっています。森と海が恋人同士であるならば、両者を繋いでいる、結んでいるのはまさしく「川」です。県の「森は海の恋人」水の循環研究会でも「森、川、海の深いつながりを研究することは重要であり、日本の中心の静岡県からその取り組みを発信することは大変有意義である」と報告されています。川はすべての県民にとって大変重要な存在であるはずです。

日本では、雨が河川に流れ出てくる割合は概ね5割を超えていると言われています。つまり流域に降った雨の半分以上は河川に流れ込んでいるということです。本来、河川の管理は川が流れているところの住民だけが背負うものではないと思います。

治水機能を維持し、地域に親しまれる河川の環境を将来に渡って維持していくためにも、地域住民等の負担を軽減するよう、予算をしっかり確保し、地元自治会へのさらなる支援等、これらの課題に対する検討が必要と考えますが、河川管理者の責務として、今後どのように対応していくのか県の見解を伺います。

【答弁内容】

県では、安全な河川施設や良好な水辺空間を保持するため、河川の除草を実施しております。しかし、除草の対象面積は約360万平方kmと広大であるため、地域の自治会などの御協力を頂いており、こうした活動には、心から感謝しているところであります。

県では、従来から肩掛式草刈機で行われていた除草作業を軽減するため、新たに大型のリモコン式草刈機を昨年度から導入し、除草作業の効率化を進めております。さらに、堤防の強化のために行う堤防天端の舗装などにより、除草対象面積を減らすことにも取り組んでいるところです。また、地域の自治会などによる河川除草等の活動は、「リバーフレンドシップ制度」により支援しております。豪雨が激甚化するなか、河川の重要性に目を向ける機会となる地域活動は、河川愛護だけでなく、住民の水防災(みずぼうさい)意識の向上にもつながるものと期待しております。

このため、県では、より効率的な河川除草への改善や工夫を続けることはもとより、予算確保に努めてまいります。また、地域活動での負担を軽減するよう、議員御指摘の危険が伴い多大な労力を要する箇所の県による直接実施や、リモコン式草刈機の活動団体への貸出しなどにより、地域活動が継続していくよう支援してまいります。

県といたしましては、引き続き、河川における地域活動との協働を通して、地域に愛される河川の良好な維持と、地域防災力の向上ができるよう取り組んでまいります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次